中学校
この人に会いたい(特別授業)
「8年生 海の落語プロジェクトによる出前授業」
3月2日(水)、8年生の特別活動の時間に「日本財団 海と日本プロジェクトの一環で活動する海の落語プロジェクトによる出前授業」を実施し、落語家の三遊亭朝橘さんと環境科学者の井手迫義和さんの話を聞きました。
このプロジェクトは、落語と環境の専門家によるトークを通して、海の社会問題を“自分ごと”としてとらえようというものです。8年生は2学期に探究実践の授業で、各自がSDGsに関する問いを深めポスター発表を行いました。そこで海洋問題をテーマに選んでいる生徒もいれば、他の生徒の発表を聴いて海洋問題について関心をもった生徒もいたことでしょう。そうした活動を重ねてきた8年生にとってこのプロジェクトはうってつけなものだったのではないでしょうか。
落語家の朝橘さんもおっしゃっていましたが、落語は「観客の想像力」が必要とされます。そこにないものをあるように見せるのは演者の腕の見せ所ですが、落語家が言葉・表情・動作・小道具を用いて繰り広げる世界を楽しむには「観客の想像力」なくして成立しません。私が国語科ということもあってか、これは読書にも当てはまるように思います。例えば、小説はそこに書かれていることを情報として淡々と読んでいても(処理していても)おもしろくありません。どれだけ「読者の想像力」が発揮され、どれだけその世界に入り込み、どれだけ登場人物の葛藤や心の揺れを“自分ごと”として捉えられるかで変わってきます。8年生の生徒がどれだけ落語を楽しんでくれるかという問題は、国語科教師としての問題(不安)でもありました。
多くの生徒が今回初めて生の落語を体験しましたが、実際に始まってみると…ウォーミングアップから三遊亭朝橘さんはエンジン全開。生徒も負けまいと応戦しています。会場はあっという間に笑いに包まれていきました。


さて、生徒は実際どのように受け止めていたのでしょうか。感想をいつくかご紹介します。
■落語は古い話をするだけかと思っていたが、SDGsなど新しいものもあることを知った。どのように話を作っているのか知りたい。
■楽しみながら色々知れた。2050年そうなるのか分からないけど、面白かった。どうやってこんなに長いのおぼえるんだろう。声が変わってるわけではないのに、違う人のように感じた。
■思っていたよりラフな感じで楽しく聞けたし、短時間でいろいろな情報も知れていいなと思った。
■とってもおもしろかった。この水族館に行ってみたい。男性しか見たことないけど、女性の落語家さんもいるんだろうか。
感想には「2050」「水族館」というワードが出てきていますが、海の問題と落語がどうつながるのかという点も興味深いことだったようです。今回、朝橘さんは「2050年の海をコンセプトとした水族館にカップルでデートに行くとどうなる?」という設定で落語を披露してくださりました。
また、感想からは生徒が今まで持っていた落語に対するイメージが変わっていったことがよくわかります。それだけでなく、それぞれの視点から問いを持ったり、関心を深めているところが面白いなと感じられます。
出前授業の後半は、環境科学者の井手迫義和さんによるお勉強の時間です。勉強と言ってもすでに温まった会場には堅苦しさはなく、井手迫さんのトークに生徒はぐんぐん引き込まれていきました。こちらも生徒の感想をご紹介します。
■説明がわかりやすくて日本がゴミを出す数が2位だと知って、アメリカなどと比べて小さいのに、何でだろうと思った。
■総合探求の授業で事前に勉強していましたが、やはり海の未来の話をされると毎回おどろかされますね。改めて危機を実感しました。今回のプロジェクトで興味深かった話題は「2050年ごろには世界中の海のゴミと魚を比べるとゴミの方が多くなる」という話ですね。事前にやっていたSDGsプロジェクトではこの話は学ばなかったです。今回のプロジェクトでまた新たな知識を得られましたが、自分はまだ海のゴミ問題、環境問題について知■お寿司のネタの話を聞いておどろきました。30年後にはもしかしたら私の好きなネタは食べられなくなっているかも知れないと実感し怖くなりました。ムリ捨てという単語自体も初めて聞いたので意味もふくめて、こちらも学習へとつながりました。危機感を持っていかなければならないなと改めて考えることができました。
らないことばかりなのでこれから学んでいけたらうれしいです。


12種類の寿司ネタが30年後にはどうなっているかというクイズには12名の生徒が挑戦しました。知恵を出し合い勘案した結果、玉子だけというショッキングな答えで挑みましたが、さすがにそこまで減ってはいませんでした。


最後に、この体験を通して美術の授業で取り組んでいる作品の着想を得たという生徒の話が聞けたのでご紹介します。この出前授業を挟んで、美術の授業では木の小箱の中にレジ袋を素材にして「レジ袋のリアル」を表現するという制作を行っていました。その生徒はファッションに関心があったため、ドレスを作ろうとしていましたが、落語の中でウミガメがクラゲと間違えてレジ袋を食べてしまうという話を聞き、美術の制作のインスピレーションを得たということでした。この話を聞いた当初は社会批判的なメッセージを強く主張しようとしているのかと思いましたが、よく話を聞き作品を見てみると、想定していたイメージとの違いに驚かされました。その生徒の作品は、クラゲと見間違えてしまうほどに美しいドレスを作り、そのドレスに見惚れているカメの様子を表現しようという「ドレスの美しさ」に主眼を置いたものだったのです。ウェットに富んだ作品を嫌味なく表現している作品からは、“自分ごと”として捉える生徒の生き生きとした逞しさを垣間見ることが出来ました。
(8年 国語科 佐藤翔哉)