自ら教科カリキュラムを考え、授業方法の開発に力を注ぐ自由を持つ本学園において、その授業を広く教育関係者に公開、多様な視点からの指摘を受け、謙虚に学ぶことは、常に肝に銘じておかなければならないことです。
独りよがりの実践は厳に戒めねばなりません。教育において、無自覚な正義ほど恐ろしいものはありません。そのような観点から1961年、第1回の「小中学校公開研究会」が開催され、それは半世紀の時を超え、現在に至るまで続いています。
このページを通し、学園の研究実践を広く知っていただくとともに、研究会へのご参加を呼びかける場とさせていただきます。
2025年度 公開研究会

2025年度 明星学園小学校・中学校 公開研究会『繋いでいくもの、創り上げていくもの』
時代は移ろい、明治時代に学制が発布されて以降、軍国主義に邁進した日本は、戦後80年経った現在、デジタル化・AI化を背景に、新自由主義社会をひた走っています。
そんな中、明星学園では昨年度、創立100周年を迎えました。昨年度の公開研究会では、これまで培ってきた1世紀分の成果と課題を踏まえながら、「子どもを育てるとは、どういうことか」を考えました。
私たち教育者は、一体どういう子どもたちを育てたいのでしょうか。子どもがこれから生きる社会は、ますますデジタル化・AI化された社会です。その社会と向き合い、恩恵を受ける力を育むことも必要でしょう。ですが同時に『人間らしい生き方』をしてほしい。民主的で平和な社会を守り、創ろうとする担い手になってほしい。教育に携わる方ならだれもが、その願いをもち合わせているのではないでしょうか。
時代の変化に囚われることなく、育てたい子どもの姿を見据えることは、すべての教師や学校に課せられた教育者としての使命であると考えられます。
しかしながら、その使命を遂行することは、並大抵のことではありません。骨の折れる営みですし、何より時間がかかります。1年研究したくらいでは、到底太刀打ちできない難問です。
よって、昨年に引き続き、「繋いでいくもの、創り上げていくもの」をテーマに据え、よりじっくりと、現代社会とそれを生きる子どもを見つめ、そんな彼らに「何を教え、どう育てるのか」を研究したいと考えたのです。
遠い道のりに挑むことになりますが、実は、そのヒントはこれまでの教育実践に隠されているはずです。明星学園の実践の歴史を批判的に検討しながら、今、子どもたちに「繋いでいくもの、創り上げていくもの」を、参加者の皆さんとともに考えたいと願います。
期日
2025年11月22日(土)8:45〜16:30 ※受付は8:00~
全体会
【時間】10:50~12:30 【場所】いちょうのホール
【特別講師】藤原 さと 氏
プロフィール
一般社団法人こたえのない学校代表理事。娘の公立保育園の父母会長になったことをきっかけに「探究する学び」に出会い、2014年に一般社団法人こたえのない学校を設立。学校教員・民間教育者・ビジネスマンなど教育変革をめざす多様な大人が探究する学び場「Learning Creator’s Lab(LCL)」を主宰。米国HighTech High、MITメディアラボ等の海外教育研修の日本導入にも携わる。著書に『「探究」する学びをつくる』(平凡社)、共同執筆に『ラクガキのススメ』(あいのり出版)などがある。
時程
2025年11月22日(土)
受付 | 1 校時 公開授業 | 2 校時 公開授業 | 全体会 | 昼食 | 分科会 |
---|---|---|---|---|---|
8:00~ | 小 8:50~9:35 | 小 9:50~10:35 | 10:50~12:30 | 13:30~16:30 | |
中 8:45~9:35 | 中 9:45~10:35 |
※昼食は各自ご持参ください。学校周辺にはコンビニが1軒ある程度です。
※公開授業の時間割は本校ホームページに掲載されますのでご確認ください。
提案教科
【小学校 総合】「生きものをさぐる」
・ 単元 : 小学校1年「おなもみ」
私たちは、自然の様子に目を向ける子どもの育成を目指して「みいつけた」の活動をしています。子ども達は、生きものの様子がよく見える春から秋にかけて、毎日のように昆虫や草花など生きものことを話題にします。
子ども達の生活に自然を取り込むことで、子ども達は感覚器官を働かせて、自然に関わるものごとを認識します。それは、自然の本質につながる個別の具体的な事実を貯めることであり、感性を豊かにすることでもあります。
また、見つけたことを先生や友だちに伝えることは、具体的な事実を伴った言葉の獲得です。そして、友だちとのやりとりによって、子ども同士がつながっていきます。
「生きものをさぐる」の分野では、自然の本質に迫る個別の事実を取り上げ、その見方、働きかけ方を学びます。そして、獲得した見方や働きかけ方を使って、子ども達がまた、自然に目を向けることをねらっています。
【小学校 国語】「明星学園の国語科が繋いできたもの ・ これからの時代に繋いでいくもの」
・ 教材 : 小学校低 ・ 中 ・ 高学年の文学作品
昨年度、宮沢賢治「やまなし」を新教材として提案、公開して授業を行いました。これにより明星学園小学校の国語科が目指す「文から豊かにイメージし、響かせ合う多様な読み」を、実際の授業を通して確認することができました。
今年度は長年積み重ねてきた文学教材の「読み」の授業を、低学年から高学年まで提案、報告します。子どもを取り巻く現実を見据えつつ、各学年の教材間のつながりを意識して研究することで、「明星学園の国語科における教育内容、教育方法とは何か」を改めて見直したいからです。この研究は、『現代社会の中で「国語を通して人を育てる」ということは、どのようなことなのか』という根源的な問いを考える機会にもなるはずです。
これまで明星学園の国語科が「繋いできたもの」、そして「これからの時代に創り上げていきたいもの」を参観者のみなさまと共に考えていければと思います。
【小 ・ 中学校 社会科】「混迷の時代に憲法・民主主義を使いこなす力を鍛え続けるには」
・ 講師 : 三橋広夫(元大学教員)
・ 司会 : 繁田真爾(東北大学研究員)
昨年4月から放送された朝ドラ『虎に翼』は、現代に生きる私たちが学び活かしていくための手がかりがたくさん描かれていたように思います。今ある憲法も人権、民主主義、自由も、これまでの歴史の歩みの中でたくさんの人たちが奮闘し獲得してきたものです。それらを守り育てていくためには、「不断の努力」が必要ですが、どこか「遠い」ものになっていないでしょうか。また、大正自由教育の流れの中で明星学園が創立した翌年、治安維持法と普通選挙法が同時に制定されました。それらの法律が制定されてから今年はちょうど100年。これらの法律は、当時の日本社会にどんな影響を与えたのか、そして、「日本国憲法」がどんなプロセスを経て出来上がったのか、その歴史的意義を振り返りながら、憲法や民主主義を日常に根差したものとして、自分たちのものとして使いこなしていくために、子どもたちと共にどんなことを考えていくことが今、大切なのかを皆さんと一緒に考えていきたいです。
【小 ・ 中学校 英語科】「Back To The Basics」
・ 単元 :
小学校1年「できるかな(can + verbs)」
小学校5年「比べてみよう(comparatives)」
小学校英語科では、明星学園小学校で大切にしている、「いつも げんきで にこにこ」をそのまま英語の授業に取り込み、外国語学習環境が子どもたちにとって楽しいものであるのはもちろん、自然で意味のあるものになるように工夫しています。英語学習のデジタル化が進む中、本校ではコミュニケーションを中心とした、いわゆる「昔ながらの」授業スタイルを継続して教材を研究しています。タブレットや学習アプリ、パソコンでの学習など、いろいろなデジタル教材が開発され目移りする中、小学校の英語学習において何が大切で、何を目指すべきなのか、がわからなくなってしまいがちです。明星学園小学校の英語の授業をご覧いただき、1年生の小学校での英語との出会い方、そして高学年から中学校への学習の繋ぎ方など、さまざまな議論を通して学びのきっかけにできればと思っています。また、1年生では絵本の読み聞かせを大切に授業の中に取り込んでいます。子どもたちが大好きなネイティブの教師による読み聞かせも注目していただけたらと思います。
【小 ・ 中学校 理科】 呼吸の本質的な概念を獲得させるには -酸化反応に踏み込む-
・ 単元 : 小学校6年「動物と食べ物」
・ 講師 : 下井守(東京大学名誉教授)
・ 司会 : 阿久津嘉孝(東京都立拝島高等学校教諭)
呼吸が停止した生物は、生命活動を維持できなくなります。生きるために呼吸が不可欠であるという点は、現象的には捉えやすい一方で、なぜ呼吸が必要なのかを本質的に理解させることは容易ではありません。
「呼吸は何のために行われているのか」「なぜ酸素と二酸化炭素の出入りがあるのか」といった問いに迫る機会は、高等学校に至るまでほとんど用意されていないのが現状です。特に小・中学校の教科書では、呼吸を単なるガス交換の事実として扱うにとどまり、その生物学的な目的に踏み込む記述は見られません。
ただの知識の蓄積としてだけではなく、理科という教科として学ぶ以上は、その生理的側面、すなわち「食べ物を酸化させ、生命活動のエネルギーを得るためのはたらき」として呼吸を捉えさせたいと考えます。
まずは動物の呼吸に焦点を当て、食べ物と燃焼(酸化還元反応)との関わりから学んでいく指導計画について、参加者の皆さまと共に検討したいと考えています。
【小 ・ 中学校 体育科】「友だちの運動をよくみる、ちがいをみつける」
・ 単元 : 小学校2年「マット運動」
当日は2年生のマット運動の授業を行います。1年生の時から「お話マット」などの運動を通して、みんなと合わせることの楽しさを味わいながら、マット運動に必要な運動感覚を養ってきました。マット運動の3つの技群の基礎となる①側方倒立回転 ②前転・後転 ③バランス技(片足平均立ち、肩倒立)を学習の対象にしながら、大きな表現の基礎となる「ジャンプを含む側転」を取り入れた技の組み合わせを、個人やグループで工夫させたいと思います。グループで学習することで、子ども同士の関係を大切にし「友達の運動をよく見る」「違いをみつける」「教えあい励ましあってみんなでうまくなる」ことを目指してお互いでお互いを認め合いクラスみんなで伸びる気持ちを育てたいと思います。
【中学校 美術科 木工・工芸科】「暮らしに根ざした創造の力、アートの手触り」
・ 単元 :
(美術)中学校1年生「物語から想像する ―井戸茶碗―」
(木工)中学校3年生「卒業製作 オリジナルの家具を作ろう」
(工芸)中学校3年生「卒業制作 生活で使えるものを作る」
・ 講師 : 藤原さと(一般社団法人こたえのない学校代表理事)
・ 司会 : 中島大一朗(本校小学校工作科教諭)
美術・木工・工芸の授業は、それぞれ異なる素材や技法を扱いながらも、「手を動かすこと」「かたちにすること」「自己を見つめること」に共通する学びがあります。美術では、生活や文化を観察する視点を大切にし、視覚表現を通じて創造力を育んでいきます。木工では、自然素材と向き合いながら、実用性と個性を兼ね備えた家具を、協同的なグループ作業で製作しています。工芸では、織りや染めの技法を積み重ね、クッションやマフラーなど生活に根ざした作品を形にしていきます。AI化や機械化が進む今、手・目・身体を通じた表現は、人間らしい創造の本質を示すものです。木を削る感覚や色彩を選ぶ判断、素材の声に耳を澄ます姿勢は、日常の美意識を育むだけでなく、さまざまな課題や目的に対して新たな視点を見出すきっかけになります。本提案では、三つの領域を横断する視点から、手を動かすことから始まる創造のプロセスを通し、生活に根ざすアートの価値と表現の可能性を探ります。
参加費 ・ 参加方法
【参加費】1,000円(後日報告集を郵送もしくはメールにて送付いたします。)
【事前申し込み】Peatixよりお申込み下さい(下の画像をクリックすると申込ページへ移動します)。当日受付にてお申し込みも可能です。
申込締め切り : 11月21日(金)16:00
会場
明星学園小学校・中学校 井の頭キャンパス
〒181-0001 東京都三鷹市井の頭 5-7-7
TEL : 0422-43-2197
担当
小学校 : 田中 中学校 : 小畑
アクセス
鉄道…
JR吉祥寺駅より徒歩15分
京王井の頭公園駅より徒歩10分
バス…
小田急・京王バス「明星学園入り口」より徒歩10分
小田急・三鷹バス「明星学園前」より徒歩1分