明星学園中学校では、社会の一線で活躍する「おとな」をお招きし、特別授業『この人に会いたい』を実施しています。学校がカリキュラムとして決めている企画ではありません。学年の教員や生徒から出てきた声が実現していきます。
「一般の講演会依頼ならお断りしているんです。でも、中学生に求められたのではお断りできません」。笑顔でそう言ってくださった方がいらっしゃいました。「大人相手の講演なら慣れているのですが、中学生に話をするのは初めてなんです」。不安そうな面持ちで来校された方もいらっしゃいました。そこでは、講師の先生の人生が、貴重な経験が、ご専門の学問が語られます。その方にしかできないお話です。生徒は夢中になって聞いています。どこまで理解できているのかは正直分かりません。しかし、何かが伝わっているのを感じます。 講師の先生に共通しているのは、自分にできることを見つけ、自分の個性を誰かのために活かそうとしている姿です。ただ、ご自身のやるべきことを見つけるきっかけは、けっして幸福な出来事だったとは限りません。広島で被爆したこと。中学校時代に立て続けに家族を失ったこと。チェルノブイリの原発事故の影響で甲状腺がんに苦しんでいる子どもたちの映像を見たこと。
生徒たちには、自分の夢を見つけてほしいと思っています。自分の人生を歩んでほしいと願っています。しかし、自分の思い通りにすべてがいくことなどありません。この先大きな挫折も経験するでしょう。その挫折からどう立ち直るか、いや挫折をばねにどう前へ進むことができるか。それが生きる力だと思うのです。だからこそ、中学生時代にたくさんの本物の大人に出会ってほしいのです。
講師の先生のお話からは常に中学生への温かなメッセージを感じます。「自分自身で感じ、自分の頭で考えてみよう」。人生に正解などないことを知らされます。「考えているだけではなく、行動してみよう」。「たとえ当初の思い通りにはいかなかったとしても、行動してみることで思いもしなかった展開が生まれてくる、思いもしなかった宝を発見することができる」。
結果を求めるからこそ行動することに躊躇してしまうのでしょう。失敗を恐れない勇気。そして、プロセスの大切さ。 授業の後、しばしば講師の先生からこんな感想をいただきます。「生徒の質問にドキッとさせられました。一見素朴そうに見えて本質的なことを聞きますね。大人の講演会や他の中学校では、どのような質問が出るのか大体想定できるんです。明星学園の中学生はちがいますね。とても面白かったです。」明星学園の教員であることを誇らしく思える瞬間です。と同時に日頃から、本当に本質を見極める力をつける実践ができ ているのか、改めて身が引き締まる瞬間でもあります。
定期的にこのような授業を企画することができるというのは、一人一人の教員が目の前にいる生徒と真摯に向き合い、その時々にどのような出会いを彼らにプレゼントしようかと常にアンテナを張っている証であろうと思います。
特別授業の「授業レポート」は、今後も中学校「NEWS&TOPICS」の中の一つのカテゴリー「この人に会いたい」に掲載してまいります。ご感想、ご意見等いただければうれしく思います。