
自分らしさを大切にする
この度は大好きな母校のリレーエッセイにお声がけいただき大変嬉しく思います。
ラジオパーソナリティーとしておしゃべりする仕事を始めて今年でちょうど30年になります。
不器用な私がなんとか仕事を続けて来られたのは、明星学園で過ごした12年間が私の根幹を育んでくれたからです。
何をするにも人一倍遅く、運動も苦手。
それでも時間がかかってもいいからやってごらん、最後に何かしら自分の答えを出してみよう、と根気強く付き合ってくれた先生たちに励まされたおかげで諦めないことを教えていただき、劣等感も持たずに過ごす事が出来ました。
成績も数字だけではない評価表。単純に優劣をつけずひとり一人の頑張りを見てくれている安心感がありました。
中学に入り、英語と音楽は大好きでしたが他の教科はまるで苦手、テストは散々な有り様でした。
ある日、担任の先生から
「とにかく英語だけは引き続き頑張ってみたらどうかな」
半ば呆れて仰った気もしますが、「英語だけ頑張れば良いなら」と真に受け、ますます英語に夢中になっていきました。
全ての教科において及第点を求められる教育や社会の中では落ちこぼれになっていただろう私には、救いのひと言だったことを今でもよく覚えています。
また、英会話クラブを作りたいとお願いしたところ、せっかくならネイティブの英語に触れようと、アメリカ人留学生を講師として連れてきてくださったことにはとても感激しました。
生徒の「やりたい」を受け止めてくださる懐の深さを感じた出来事です。
小さい頃からエンターテイメントの世界に憧れていた私は、中学に入るとシンガーのオーディションを受けたり、高校ではバンド、音楽部、演劇部に顔を出しながら、将来自分に何が出来るのか夢を膨らませていました。
友人たちも思い思いに自分の好きなことを追求していて、お互いの「好き」をリスペクトし合う空気感がとても好きでした。
そんな同級生たちと、今も深く太い絆が続いていることは人生の宝物です。
先生方もありのままを尊重し応援してくれる豊かな土壌があったからこそ、自由な発想で色々な事にチャレンジ出来たのだと思います。
明星祭では先生もバンドを組んでステージでパフォーマンスされていましたね。
常にオープンな職員室、先生と生徒の垣根が限りなく低いのも明星ならではの居心地の良さでした。

高校の北海道修学旅行 ムツゴロウ王国にて
ちょうどその頃、毎朝ラジオから聞こえてくるバイリンガルDJの軽妙でおしゃれな語り口、新しい情報をリスナーと共有する楽しさに魅了され、音楽、英語、声、3つの好きな要素を全て生かせる仕事なのではと憧れるようになりました。
大学は英語で授業を行う学部で学びつつ、ラジオ局の体験セミナーに参加したことをきっかけに、アシスタントのアルバイトをしながら本格的にDJを目指し始めたのですが、人々の生活に寄り添い共感出来るようなおしゃべりのためには、多様な社会や仕事を知ることが大切なのではと気づきました。
そこでまずは様々な経験をしようと、大学卒業後にいただいた奨学金でアメリカでの企業インターンプログラムに参加、帰国後も数年間は一般企業で働きながら、週末にラジオ番組のレポーターとして経験を積んで行くうちに少しずつお声をかけて頂けるようになりました。
ラジオ番組はスタッフの方々と共にチームワークで作っていくものですが、進行台本があってもフリートークの部分が多く、皆で力を合わせて作ったものが最終的に自分の発した言葉で聴いている方々に届くことになります。
どのような表現を選ぶのかは特に生放送ではやり直しがきかず、伝え方でニュアンスも変わってしまう。
心に届く言葉を選びながら進める難しさの中にもやりがいを感じます。
ラジオパーソナリティーはその名の通り、「パーソナリティー=個性、自分らしさ」が大事な要素です。
明星で自分らしさを大切にすることを学んだおかげで、日々失敗や後悔を繰り返しながらも個性的な発想や柔軟性が問われるこの仕事を楽しみながら頑張れています。


先の明星学園創立100周年記念式典 誕生祭で司会を担当させていただけたことは本当に光栄でした。
今も強いアイデンティティーを感じている母校にいつか恩返ししたいと思っていた中、一生懸命続けてきた仕事で少しでもお役に立てたならこんなに嬉しいことはありません。
そして最近はもう1つの夢だったプロドッグトレーナーとしても活動しています。
人の都合で命を全う出来ずに「処分」という悲しい道をたどる犬が多く存在します。
犬との正しい付き合い方を知ってもらい、飼育放棄が減れば人と犬とがもっと幸せな毎日を過ごせると思っています。
しつけ方教室やイベントを通じた「殺処分ゼロ」に向けての啓蒙活動もライフワークのひとつになっています。
在校生の皆さんには、明星ならではの自由な空気と時間の中で自分にとって幸せな道はどのような道のりなのか、じっくりと思いを巡らせる時間を持ってみて欲しいです。
迷ったり悩んだ時は1人で抱えず、先生方や友人に相談してみてください。
そっと寄り添い、応援してくれるはずです。
そしてその人間関係は卒業後も続いていく素晴らしいものになりますよ!
「いつも元気でにこにこ」
明星生が小学校の入学式で最初に頂く言葉です。
当時はこんな当たり前のことを、と思っていましたが、最近になって改めてこのフレーズを思い出し、心の在り方の大切さを噛み締めています。
大人になるとこのシンプルなことがなかなか難しく感じる時もありますが、私も明星学園の精神で、心身共に自分らしく健やかな心を忘れずに、ラジオを聴いて下さる方が元気になれるような番組を続けられたら幸せです。

PROFILE
柳井 麻希
(やない まき)
ラジオパーソナリティ プロドッグトレーナー
出演中番組
FM ヨコハマ 『FUTURESCAPE』 『LIGHT UP KANAGAWA』
ラジオNIKKEI第2 RaNi Music など
桜美林大学国際学部国際学科卒業
ICC奨学金 特待生として米・シアトルでの国際ビジネス研修修了
帰国後 国際通信社やバイリンガル放送の制作会社勤務を経てラジオパーソナリティに
イベント司会、ナレーションも多数
ドッグトレーナーとしても活動
『殺処分ゼロ』を目標に犬との暮らしについての啓蒙活動やイベントを開催
神奈川県最大級の保護犬・猫譲渡会『HUG ANIMALS!』でレクチャーを担当
第10回イラン国際ラジオフェスティバル 最優秀ホスト賞受賞
訳書に 『日光100年洋食の旅』(MUSASHI BOOKS)
FUTURESCAPE Fm yokohama
SAT 9:00~11:00
https://www.fmyokohama.co.jp/program/futurescape