卒業生インタビュー 友達も先生も思い出も 全部が“明星”
明星学園の教育理念「個性尊重」「自由平等」「自主自立」は、生徒たちをどのように育んでいるのでしょうか。明星学園高等学校を卒業した大学生5人に、明星での学校生活、友達、先生、明星学園で身につけたことなどを語り尽くしてもらいました。卒業生のリアルな言葉から“明星学園の教育”が見えてくるのではないでしょうか。
Profile

- 本間 吟奈さん[2023年度卒 理系コース]
- 帝京平成大学 薬学部 薬学科1年
大学で薬のことを学び、薬剤師を目指している。高校入学。 - 松井 翔太郎さん[2023年度卒 理系コース]
- 桜美林大学 航空・マネジメント学群 フライトオペレーションコース 1年
幼い頃からの夢であるパイロットを目指す。大学2年の秋から1年間渡米し、ライセンスを取得して帰国予定。
中高では音楽部、剣道部に所属。小学校入学(途中小5〜中1はドイツへ)。
- 岡道 健太さん[2023年度卒 理系コース]
- 杏林大学 保健学部 臨床工学科1年
大学では医療工学を専攻。将来は病院で医療工学を活かせる職種に就くことを目指す。
中高では和太鼓部に所属。中学入学。 - 本郷 達也さん[2023年度卒 理系コース]
- 立教大学 コミュニティ福祉学部 福祉学科1年
ソーシャルワーカーを目指して大学で学ぶ。高校では陸上競技部(棒高跳)に所属。
現在も大学の陸上競技部に所属して棒高跳に取り組む。高校入学。 - 能 恋菜さん[2023年度卒 文系コース]
- 目白大学 心理学部 心理カウンセリング学科1年
公認心理士の資格を取ってカウンセラーになることを目標に大学へ。
高校2年で自治会長。サーフィンで全日本の大会への出場経験がある。小学校入学。
GRADUATE INTERVIEW

自由だけど秩序がある。
その不思議な感じが明星
皆さんの明星学園での思い出を教えてください。
明星って”全部が明星”なんですよ。だから“らしい”思い出を選ぶのが難しい(笑)。でも、自分にとっての思い出なら和太鼓部ですね。中学からやっていて、高校に上がるタイミングで同期が4人、高校で3人増えて7人で活動していました。少ない人数でどうやって円滑に部活を回すかを考えるのが楽しかったし、練習に夢中になれたことが一番の思い出です。和太鼓部は大人数で1つの音を創ることが目標で、大会や公演会での披露時間は7~8分。そのために毎日3~4時間練習するんですよ。7~8分に向けてなぜこんなに頑張れるんだろうと自分でも思いましたが、みんなで練習する時間が楽しすぎるからやり続けられた。それが和太鼓部。自分にとっての一番の思い出です。
私は高校2年生のときに自治会長をしたことです。明星では生徒会ではなく自治会と言っていて、自分たちで何をしたいか、どういう学校を作っていきたいかを生徒たちで考えることをモットーに活動しています。私が自治会で「明星らしい」と思ったのが、みんながしっかり自分の意見を言えること。「否定されたらどうしよう」「間違っているかも」と思って自分の意見を言うことに怖さがあると思うんですが、明星の授業では人と会話したり、自分の意見を言ったりすることが多いので、自然に自分の意見を持ち、発言もできるんです。だから自治会でもいい案が出たり、意見を積極的に言ってくれたりして、まとめやすい自治会でした。
自治会長、やっていましたね。僕は小学校1年から一緒だったので成長したなと思いました(笑)。
確かにいろんな人、特に小学校からの友達には「えっ? 恋菜が自治会長? なれるの?」と言われました。以前は自分の意見を言うことが得意ではなくて。「変わりたい」という気持ちはずっとあるのになかなか踏み出せなかった時に、中学の担任の先生が「クラス代表をやってみれば」ときっかけをくれたんです。勇気を出してやってみたらいろんな人に「まとめてくれてありがとう」と言ってもらえて、それがすごく嬉しかった。そこから勇気を出せるようになりました。それに、どれだけ前の自分を知っている人が驚いたとしても、私が変わっていくことを受け入れてくれるとわかっていたから、高校2年生で自治会長に立候補したときも怖さを感じずに踏み出せました。
私は学校の思い出と言えば授業ですね。高校2年生から理系コースを選択したのですが、生物の谷口先生の授業が大好きでした。2時間の授業の中で1時間は授業、もう1時間はずっと先生の話(笑)。他にも地学の堀口先生の授業では、急にみんなで太陽を見に出かけたこともあります。そういう自由で型にとらわれない授業も多くて、常にいろんな学びを味わえる感覚がありました。あのラフで自由な授業は、なかなか味わえないものだったと思います。大学の方が、規則が厳しく、そんなことを思わないですね。
自由だけど秩序がある。その不思議な感じが明星です。
先生との距離が近くて、先生が雑談も含めていろんな話をしてくれるからこそ、自分たちも授業を聞こうと思えるんです(笑)。僕の思い出も、そういう先生との距離の近さにあります。僕は陸上競技部で棒高跳びをしていましたが、先生が教えてくれることをただ聞くというよりは、先生が作ってくれたメニューについて相談しながら自分でも考えてきました。距離が近いからこそ、押し付けではなく、話し合えるんです。放課後や授業終わりに先生とずっと話した経験は、明星生なら必ずあると思います。
僕の思い出は、人間関係。明星は「自由」と言われますが、それはそれぞれが自分のやりたいことをやっているという意味ではなくて、自分がやりたいことをやれる環境が揃っていて、基本的には何をやっていても、他の人からの嫌な目線を感じにくいんですよ。誰でもなじみやすい雰囲気があるので、人間関係がスムーズに作りやすいんです。それに上下関係がいい意味で緩い。尊敬がないとか、先輩として敬っていないわけではないですが、ラフな距離感で僕にはとても過ごしやすかったです。
でも、緩くあるためには距離感を間違えてはいけなくて…。あんな先輩になりたくない、後輩になりたくないと自分でしっかり考えて、いっぱい気づいて、人と人とのていねいな付き合い方を大事にするようになりました。これはこの先も役に立つと思っています。
和太鼓部は、部活中だけは上下関係が厳しいんですよ。練習が終わったら冗談を言い合ったり、みんなで話したりもしますけど、部活は部活、普段の生活は生活と分けている感じでした。でも、上下関係があることも僕は嫌ではなかったです。敬語を話せることも社会に出たら大事になると思うので、それを身につけられたのは良かったです。
学校にはいろいろな人間関係があっていじめについても問題になりますが、明星ではどうですか。
いい意味で周りを気にしていないんですよね。自分が大事だから(笑)。
気が合わなかったらわざわざ話にいかないし、気が合うなら話しますけど、だからといって誰かを拒絶はしない。
明星は少し変な人もいれば、すごく変な人も多いんです(笑)。だから浮くということがない。いじめが起きるときは、「あいつ、変なことをしているからいじめてやろう」という感じかなと思いますが、明星は個性が豊かで、個性を隠さない人が多いので、それで偏見を持つことはないように感じていました。
もし、いじめている人がいたとしたら、「いじめている方がやばくない?」となる雰囲気があるように思います。
みんな自分を大切にしているから、いい意味で他人に興味がないんですよ。自分がしたいことをするし、自分が話したいことを話すし、自分が嫌だと思ったことは嫌だと言える。他の人が好きなことをしていても、自分も好きなことをしているから何かを言うことはないし、相手が何かを言ってくることもない。本音を言い合える関係なので、もし嫌なことをされたら「なんで?私はこういうのは嫌だ」と言えると思います。

明星は自分のままで
いられた場所
卒業してから振り返ると、明星学園は自分にとってどういう場所でしたか。
明星は毎日通う場所。中学3年間は皆勤でした(笑)。学校に行くのは当たり前で、学校があるから学校に行く、それが自分にとって真っ当なこと。その毎日通う明星で、自分の今後の人生を考えました。今、医療工学という分野に進んでいるきっかけも、高校3年間明星だったからの選択だったと思います。
高校で進路について悩んでいたときにコロナがあって、医療系の仕事というのは何をしているのかなと思ったことが始まりでした。病院で何をしているのかが気になったんです。それで理科の谷口先生や英語の大石先生に相談したら、「簡単な道じゃないし、覚悟が必要だよ」と言われたんですが、だからこそ「その道に進みたい」と思いました。
それに和太鼓部の定期演奏会でいつも三鷹市公会堂までバスに乗っていく途中に僕が今通う杏林大学があって、その近くに杏林大学病院があるんです。学校の環境的に病院が目に入ってくることが多く、少しずつ興味を持ったところもありました。
僕は小学校1年から明星で、途中3年間は海外にいて、その時はドイツで公立の日本人学校に通ったんです。いいところもあるんですけど、「言われたことをやれ、言われたものを出せ」というガチガチなところもあって、最初びっくりしました。そこから戻ってきて中高を過ごした明星は、自分にとってとても過ごしやすい環境。そこにいると気づかないうちにいろんなことがうまくなっていたり、人間関係の築き方やコミュニケーションの取り方だったりが学べたり、成長もできるとても居心地がいい場所でした。僕は将来パイロットになりたいと元から決めていたので、進路に悩むことなく勉強も適当にやっていたんですよ(笑)。それでもガチガチに固められていないからこそ、自分がやりたいことや必要なものはちゃんとやれて、その結果将来につないでくれた場所でした。
もう一つ、明星はずっと続く仲間ができる場所です。例えば僕の部活の音楽部にお母さん世代のOBやOGがいきなり来たりするんですよ。差し入れを置いていってくれたり、一緒に歌ったりして、何年経っても戻ってくる人がいる場所なんです。それが文化的に受け継がれています。
私にとっては、自分が自分のままいられる場所です。明星では他人が自分のことを否定しない、受け入れてくれるという安心感があったので、大学に入ってからは「自分のままではいられないんだな」「自分を偽らなきゃいけないんだな」と思いました。偽っているのも自分ですが、「緊張するな」「きついな」と思うことが多いです。
私も小学校から明星にいて中学も高校も知り合いがたくさんいたので、大学で初めて知り合いがいない場に行って、「こういう気持ちになるんだ」と知れました。明星は自分のままでいられた場所、それは当たり前ではなかったと感じています。
僕は高校入学でしたが、それでも明星は自分を出せる場所でした。「こうしなきゃいけない」というのが全然なかったです。何をしても周りが認めてくれるし、変な目で見られないから自分を出せるところが良かった。最初は「高校入学あるある」として、周りの髪の色や制服以外の服装に驚いたんですが、入学して学校生活が始まると、「自分が好きだからやっているんだ」というのがものすごく伝わってくるんですよ。それで全く気にならなくなって、安心して自分を出せる場所になりました(笑)。
僕にとっての明星は、帰ってこられる場所、振り返れる場所ですね。陸上の先生が「大学や社会に出ると明星とは違う環境が待っていたりするけど、悩んでいたらいつでも帰ってきてほしい」と言ってくれたんです。だから陸上競技部は帰ってくる人が多く、練習を見にいったら卒業生が練習に混じっているというのが普通の光景です。実は僕もこの1年で何回か来ています。同時に振り返れる場所でもあって、ここに来ると明星で大事にしていたことを思い返すので、大学で好きなことをやっている自分にも「これでいいんだ」と思えます。
私も高校入学で、最初は緊張していましたが、内部生も普通にしゃべってくれて、先生もしゃべりやすい空気を作ってくれて、そのうち内部とか高校入学とかは関係なくなり、全く気にならなくなりました。
私にとっての明星は、変な言い方ですが「異文化交流の場」でした(笑)。私が高1で仲良かった友達が文系だったり、同じ理系だったり、音楽をやっている子も、スポーツをやっている子も、美術をやっている子もいる。コースがいっぱいあるからやっていることがみんな違うし、好きなものがそれぞれ違うんです。毎日それぞれがいろんなことしていて、その話を聞いたり、見たり、話したりするのが面白かった。だから異文化交流の場。大学に入ってから知ったのが、意外とみんなが毎日同じことをしているんですよね。明星では毎日に刺激がありました。
絶対関わらない人同士が関わっているんですよ(笑)。
それに明星のすごくいいところが、それぞれ頑張っていることが何かあるんです。友達としてそれが尊敬できる。そして自分も頑張ろうと思えます。

真面目で真剣な話も
ふざけた話もできる
そういう友達は
明星でしかできなかった
それぞれの大切な場所である明星学園。そこでの友達は、自分にとってどんな存在ですか。
高校は普通、関係ないものが持ち込み禁止ですが、明星は休み時間に使うとか、授業の邪魔にならないものだったら基本何を持ってきてもいいんです。だからいろんなものを持ってくる人がすごく多い。普通は教室にないはずのものがたまに置いてあって、いい意味でいろんな刺激を受けます。「こんなこと考えているのか。こんなこと考えたことなかった」「こんなものが好きなんだ。知らなかった」と思うことが毎日あるんです。それが個性だから、自分とは違う考えや好みの人がいても「へえ、おもしろいね」という感じ。それが友達でした。
明星は、自由だからこそ自分で考えることが多いんです。校則があって「これがダメ」となると人間は破りたくなるけど、規則がないことによって自分で「これはやっていいのか、やってはダメなのか」を考える。その機会が明星は多くて、その判断がちゃんとできるので、休み時間は遊ぶけれど授業中は持ち込まないといったことができたんだと思います。
そんな明星での友達は、僕にとって気を使わなくていい存在です。お互いに本音で言い合える関係ですね。いい意味で空気も読まなくていいんです。大学で一番違いを感じるのはそこ。関係性もあるかもしれませんが、本音だと気まずいこともあります。
それは私も共感します。私は能さんと仲が良くて、卒業後も高頻度で会っていますが、他の明星の友達も会えばすぐに高校にいた時に戻れるんです。話しやすいし、何を言っても受け止めてくれる。全員が本音で話していて、疑うことがない。私、高校で明星に入ってから今までより明るくなりました。それは明るい子が多いので話しやすかったことと、絶対的に受け止めてくれる子が多いから。個性丸出しの人が多いので、高校入学時は驚いたり怖かったりするかもしれませんが、みんな根が真面目で将来のことをちゃんと考えています。だから普段はふざけているけれど、真剣な話もできる。そういう両面を持った心から信頼できる友達は明星でしかできなかったと思います。
明星の友達は変わりがきかない存在です。壮大な話になりますが、自分の人生に欠かせない人たちです。大学の友達と比べるのは良くないし、年月も違うから違いが出て当然なんですが、大学の友達は浅く広くて深いところまではいかない。でも、明星の友達は自分が親にも出せなかった本音を語れたり、大学での悩みを相談したり、真面目な話をしたり、楽しい経験も悲しかった経験も話せる。喧嘩もできます(笑)。本間さんもいろいろ相談をしてくれたり、刺激をくれたりする私の人生にかけがえのない人です。
明星の友達は一生ものですね。大学に入って会わなくなるとか、連絡を取らないということはないです。自分は中学入学で、明星とは別の高校に行った友達もいますが、同じようにずっと仲良くしているし、毎年クリスマス会も恒例行事としてやっています(笑)。どれだけ時間が経っても明星の友達。一生つきあいたい人たちです。

やりたいことを軸に
人生を進めばいいと
明星でたくさん学べた
では、明星で身につけたことや成長したこと、今の自分に生きていることはありますか。
勉強面で言うと、明星で自分に合ったやり方でやっていいんだと思わせてくれたことが、今に一番生きています。教科によって違いますが、基本的に自由なので、先生が「こうしなさい。ああしなさい」というのはなくて、「やってみれば」と言ってくれていろんな場所で自由な発想ができたんです。だから、今も私はいろんな場所で勉強しています。やり方はいろいろで自分に合ったやり方でやればいいんだなと知りました。
そして一番大きいのは、自分のアイデンティティを作ってくれて、それが私の人生に反映されるということ。高校生は一番自分の性格が変わる時期だし、そこが決まる時期だと思いますが、その意味で明星は自分の人間性を決めてくれた場所です。
今の自分を作ってくれたのは明星です。小学校3年生からサーフィンやっていてプロになりたいという夢がありました。でも高校に入ってからカウンセラーやメンタルコーチになりたいという夢も出てきたんです。ほかにも自治会長をやりたいとか、いろんな何かをやりたいと思った時に「挑戦してもいいんだよ」ということを明星で学びました。サーフィンは大学進学を諦めて海外に行かないと続けられないと思っていましたが、大学行きながらサーフィンすることもできるし、選択肢は一つではない。一つの物事をいろんな視点から見られるようになったし、柔軟な考え方を明星で教わって、今の自分になれました。
自分に生きていることはいっぱいあります。まず今に一番つながっているのは陸上のこと。大学は陸上部のコーチがいないので自分たちでメニューを考えるのですが、明星でも自分で考えてやることを大事にしていたので、軸は変えずに続けられています。自分で考える力が身についたのは、すごく良かったと思います。
それに僕は福祉学科で、人として見ることの大切さを大学の先生がよく話します。例えば「障害のある方に対して、助けてあげる立場だと相手を弱者と見るのではなく、人として見なさい」とよく言われますが、明星で偏見を持たないことを身につけてきたと思うので、そういう話がスッと入ってきます。
もう一つ、自分の好きなことを軸に頑張ることも身についていて、好きなことを突き詰める、好きなことだからやる、という気持ちが折れないのは、明星でも陸上を続け、周りが認めてくれたおかげだと思います。
明星は「やり方がわからない。どうしたらいいですか」といったことを先生に聞きやすい環境で、それを聞いた先生も押し付けるのではなく、「こういうのはどう?」と提案を出してくれるんです。わからないところがわからないような状況のときに、大人に聞きにいける。それは明星で身につけた一番大きなところのような気がします。大人相手ではなく友達に対しても、わからないことを正直に聞けます。自分がわからないところを相手に出せて、それに相手が答えてくれるという関係が作りやすいんです。「知らないなら聞けばいいじゃん」「知らなかったなら教えるよ」というのが普通で、「分からないことは恥ではない」「分からないから知ろうとする」「だから知っている誰かに聞こう」と思えるようになったのはでかいです。
明星は自分の進路や人生につながっています。僕が選んだ将来の道がパイロットで、簡単ではないし、お金もすごくかかってくるので、いろんな人の助けを借りないと1人では進めません。迷っていた部分もかなりあるのですが、父の後押しもあって、結局希望の道に進みました。それは小学1年生から明星にいて、怒られるからやらないとか、やって怒られた次はやらないではなく、チャレンジをしていくことでいろいろ知ることがあると学べたからだと思います。自分でやってみたいことがあれば挑戦することは悪いことではないし、失敗することも全然悪いことではない。「とりあえずやってみようよ」というポジティブさで生きられるようになりました。自分が好きなこと、やりたいことを軸に人生を進めばいいと思えるようなことを、明星でたくさん学べたんです。もしも、僕がパイロットになれなくても他の何かやりたいことを見つけて自分でやっていけると思えるし、柔軟さが培われたというところはすごく大きいです。
もう一つは人間関係。一人では何もできない。誰も知らない環境に行った時は一人ではどうしようもない。それはどんな人間でもそうですが、今は思い立った時や困った時に連絡したらすぐに話聞いてくれたり、絶対にバックアップしてくれたりする明星の友達がいると思える。1人ではないと思えるんです。それは自分のこれからも支えてくれます。

答えがない、だから考える
それが自由
今日、皆さんから何回も出てきた「自由」という言葉。明星の卒業生が思う「自由」を教えてください。
感覚的な話になりますが、柵の中にいるとして、明星生以外が思う自由が柵をぶっ壊すことや柵の外に行くことだとしたら、明星生の思っている自由は柵の中で何ができるかを考えること。柵をわざわざ壊すとか、飛び越えるようなことをしなくても、自分たちが置かれている状況で自分たちに何ができるのかを考えられる自由があるんです。それが明星の自由です。
十数年間、明星で自由、自由と言われてきて、結局自由が何かは分からないです(笑)。けれど、自分がやりたいことに挑戦する一方で誰かの邪魔になったり、誰かに迷惑をかけたりするのであれば、そこは自重しないといけない。やりたいことがあるならどうしようと考える。周りとのバランスを自分で見極めつつ、最大限の可能性を生かすような状況を作る。多分、それを「自由」と言うんじゃないでしょうか。
ぴったりの答えは出ていないのですが、一つわかっているのは自由であるためには素直でいること。最低限のことを守るために素直でいることが自由につながるし、それが自由への第一歩かなと思います。
私は答えがないことだと思います。今、自由ってなんだろうとなった時にみんな違う答えが出てきたのも自由だし、自由について考えるのも、考えられる状態があるのも自由だと思う。答えがあったら自由に考えられないし、答えがあるとしたらみんなが「こうだ、こうだ」と決めつけて自由になれない。答えがないから何かを考えることが自由なのかなと、私は思いました。
誰かのやっていることを応援して、自分も応援される環境が明星の自由だと思います。例えば教室で暴れるのも自由ですが、それは誰にも応援されない。けれど、自分の好きなことをやったら応援されるし、他の人が自由なことやろうとしたら応援する。そういう環境が明星にはあるんです。それが明星らしい自由です。